デジタルアンプ編その2


 現状(2007年10月)でうちのオーディオはこんな感じです。

 音源(PC) → チャンネルデバイダ(Frieve Audio M-Class) → アンプ1(TU-870) → トゥィータ(アルテックCD-408トゥィータ部)
                                        アンプ2(PAM8101) → ウーハー(アルテックCD-408ウーハー部)

 チャンデバを入れることで満足できる音になりました。
 チャンデバを使うという基本方針は間違ってないと思います。でも、なんでそもそもチャンデバが必要になったのか。
 それはCD-408の性能、特に声の再生に不満があったからです。そこがヘンなんです。
 「声の再生には最適」というのが、このスピーカーの一般的な評価。私の感想とまるで正反対。なんでそうなったのか。
 思い当たるのはアンプの性能です。
 私の使ってるアンプは真空管にせよICにせよ、どれも出力1W前後。はっきりいってオモチャです。それでもスピーカーの能率(エネルギー効率)がいいので問題ないと思ってました。しかし実際にこのスピーカーを1Wそこそこで鳴らしている人は少ないでしょう。私はひょっとして今までこのスピーカーのおいしいとこを全然食べてなかったのかもしれません。
 ならば、出力の大きなアンプで一度聴いてみようか。
 こういう事は考えるより実際にやってみるのが一番です。


TDA1552Qを使ったアンプ。出力は 20W + 20W と電池アンプとは比べるまでもありません。


愛情に飢えた後ろ姿

 以前こっそり作っていたのですが、なんの特徴もない中庸な音に聞こえたので常用に至らず。カップリングコンを替えれば化けるかもですが、そういう気もおこらず動体保存してました。とりあえずこいつで聴いてみます。

試聴曲* ベートーヴェン交響曲第五番「運命」 スィトナー/シュターツカペレ・ベルリン

 ブッ。いい音です。やられた。私ゃまたしても遠回りしてたのか。

 しかしこのアンプを常用するつもりはありません。値段のわりに優秀には違いありませんがマジメすぎて魅力がない。そこらのミニコンポと同じ傾向の音です。元々そのような音がキライで電池アンプに走ったのだし、それにAB級アンプって原理からして私のように音量を絞って聴く人間には向いてないと思う。
 なので同程度にパワフルなデジタルアンプ、TA2020を作る事に決定しました。
 というかもうIC本体持ってるんで。

 今まで作るのが面倒だっただけです。
 必要な部品をリストアップしてまずは頭の中で組み立ててみるとします。

IC  TA2020 1 出力 20W + 20W(4Ω時)。
うちのスピーカーのインピーダンスは8Ωなので実際の出力は10W + 10W 程度だと思います。
コイル 20uH 4 スピーカー(8Ω)にあわせて容量を変更。自作の空芯コイルを予定。
タンタルコンデンサ 1.5uF 2 カップリング用。タンタルがカップリングに適正があるかないかはともかくとして。
OSコン 180uF程度 2 デカップリング用。
フィルムコンデンサ 0.22uF
0.47uF
4
2
ローパスフィルター用。
同上。
積層セラコン 0.1uF
1uF
11
1
いろいろ。
抵抗 20kΩ 4 入力&負帰還 進抵抗を使う予定。
抵抗 8.25KΩ 1 金皮を予定。
抵抗 10Ω 2 金皮を予定。
ショットキーバリア 4
ケース 1 アルミ製 大きめ。
基盤 1 大きめ。
スイッチ 1 電源用にやや大きめ。
LED&抵抗 1 それなりに。
端子 4
電源端子 1


 データシートに従うならこれだけで動くはず。意外に少なくて済みそうです。但し今までの電池アンプと違ってコンデンサの耐圧は16V必要。ちょっと気合がいります。

 実際に作ってみました。

 別に悪いことしてるわけじゃないのに思わず「すみません」と謝りたくなる出来ばえです。まあいつものことですが。
 ありあわせの部品を多用したので理想とちょっと違ってしまいました。

・コイルは結局以前作った10uH(程度?)の空芯コイルを流用。
・入力部の抵抗に常用してた進抵抗のストックがなく中古を流用。負帰還抵抗はニッコームで代用。
・ローパスの0.47uFを買い忘れたため、以前作ったアンプから引っこ抜いて流用。
・ケースを手持ちのもので流用することにした。大きな空芯コイルを納めるため、結果として基盤は小さく作ることとした。


できれば見せたくない後ろ姿。
いや、むしろ見てほしい。見てくれ〜っ!


 このICにはピンが32本もあります。それに応じて配線の量も増えるわけで。集中力が続かないので数日に分けて組みました。
 キットを買えば苦労は少ないですが、キットとIC単体の差額でさえ馬鹿にできない経済状況なので。
 ともあれ回路が複雑なほどミスは増えます。事前に紙と頭でシミュレーションしたのにこの出来ばえ。私にはこのあたりが限界です。

 まさか一発で動くとは思ってないのでバラック組みのまま起動を試みます。
 


電源も本格的なやつだと怖いので
こんなのでやってみました。

気分は自爆テロ



 …案の定というか、うんともすんともいいません。とりあえず電気は来てるみたいですが。
 データシートをにらめっこして配線ミスを数カ所発見。当初は整然と組まれていた(?)配線が修理のたびに迷路となっていく…
 それでも動きません。もう探せるミスは調べ尽くしたつもりなのですが。あきらめてその日は寝ました。こういう事って次の日になればいいアイデアが出てくるものです。
 ところが今回に限っては、翌日改めて配線を眺め直してみても、う〜ん… わからん!
 どんなに考えてもわからんのでもう一度電源入れてみました。そしたら鳴りました。なんで!?
 鳴ったのは片chだけでしたが、鳴ればこっちのもんです。改めて鳴らないチャンネルの配線を徹底的に調べ… うが〜っ! 違いが分からん!
 ええい、ままよともう一度電源入れてみました。両方鳴りました。
 な ・ ん ・ で !?
 …もう、いいです。これでよしとします。

音の感想

 メインのアンプ(といってもPAM8101)と繋ぎ替えて聴いてみました。チャンデバの位相もf特も再調整せずゲインを粗調整しただけですが。

解像度が低いのか音が荒い。おおらかといえなくもない。低音の迫力は増した。「うるおい」や「響き」は豊かになったようにも思える。ただしそれがよく聴こえる時と逆の時がある。クラシックは音が濁ってよくない。
チャンネルセパレーションが思いのほか良好。モノラルアンプの時と比べても聴感では遜色なし。この点でTDA1552とは雲泥の差。
追記:電源部に留意する(両チャンネルをセパレート化、等)するとTDA1552は化けるらしいです。私の勉強不足でした。
電源投入時のPOP音が皆無に近い。「動作してないのか」と思ったほど。TA2020最大の問題点のはずなのだが、この石が当たりだったのか!?(ちなみにKOREA製)
無音時の残留ノイズが多い。最初は気づかなかったけどスピーカーに近づくとしっかり聞こえてる。電源に電池を使ってるというのに。
追記:後にアンプのせいではなくソース側が原因と判明。

 チャンネルセパレーションとPOP音以外のすべての点でPAM8101を上回るだろうと予想してたのですが、音の解像度も残留ノイズもPAM8101の方が優秀。PAMの意外な善戦にびっくりです。もっともPAM8101は高音の質がよくなかったので、どのみち単体ではメインアンプとして使えないけど。逆にPOP音はPAM8101のほうがデカいし、ほんと実際にやってみなきゃわかんないもんです。
 ともあれまずは正常動作を確認してひと安心。POP音が少ないのは嬉しい誤算でした。とはいえTA2020のポテンシャルはこんなものじゃないはず。まだケースにも入れてない状態だし、チャンデバの調整もしてないし、出力の位相もノーチェックだし。音質についてはおいおい改善したいと思います。
 細かい弱点よりも、まず音を聴いた時に「いい音だ」と思いました。こういう直感って大事です。機械も人も同じです。こちらが好感を持てば向こうも笑顔を見せてくれます。TA2020をまだ「惚れた」とはいえませんが、好感はもてました。なんとかうまくやっていけそうです。

そして改造

 このままケースに組んでも常用はできますが現状ではPAM8101と一長一短。
 ネットで情報を仕入れ、思いつくまま改造を試みるとします。

チャージポンプ用
コンデンサの変更
チャージポンプ用コンデンサ(データシート上の Cp)にありあわせのマイラコンデンサ、それも定格の半分のを使用。
チャージポンプの意味がよくわかんなかったので適当にやってた。
いまだによくわかんないけど、わからないなりにOSコンに変更。極性は慎重に。 
アナログGNDと
デジタルGND結合
繋げないとそもそも音が出ない。ただ、繋ぎ方が問題。
両GNDは一点で繋ぎ、それもインダクタ(コイル)をかませて交流をカットするのが理想的らしい。実践してみよう。
5Vを外部供給 このICは内部で5Vを生成し、それを自身のオペアンプに供給してる。
その5Vを外部から供給すれば音がよくなるという伝説に誘われるままに、三端子レギュレータを増設。
デジタル5V部
デカップリング変更
アナログ5V、デジタル5V、それぞれに現状ではデカップリングに100uFの電解コンデンサ(MUSE)を付けている。
デジタル部はOSコンに変更した方がいいかも。
DCオフセット改善 無音時にもスピーカー端子から微弱電流が漏れている。回路を増設してそのオフセットを改善する。
元々は電源投入時のPOP音解消のための技。うちはPOP音しないのでやらなくてもいい。
とりあえずオフセットを計測した後に検討。

 ここまでやればPAM8101を超えられるだろうか。相手は意外と難敵だぞ。

改造・フェーズ1
 チャージポンプ用コンデンサの交換&両GNDをインダクタで結合してみました。
 な〜んにも変化なし。

改造・フェーズ2
 5Vを外部供給&デジタル部デカップリングコンの交換

 ギャ〜ッ!

 聴いた瞬間、「もうPAM8101の出番はない!」と思いました。なんというか、音の実在感が違います。
 逆にこの改造をしないとこの石は意味がないと思いました。そんくらい違います。
 この石、「デジタルのくせにアナログくさい音」という評価で、私もそう思いました。おそらくこの石に内蔵されているオペアンプの性格なのでしょう。ここを外付けにしてくれていろいろ交換とかできたら、もっといろいろ楽しめたのかもしれません。
 ともあれ、解像度がどうとか残留ノイズがどうとか、考えるのも面倒なほど音楽に酔いしれています。こいつはいい。
 ただし無音時の消費電流が50mAから60mAに微増。ちょっと残念です。

 あと、DCオフセットはうちの頼りないアナログテスターでの計測で両chとも5mV程度だったので、放置します。



一応動作したので、あとは恒例のケース作り。
こういうのも段々慣れてきました。
いいんだか悪いんだか。

嫌がるのを無理やり押し込めます。男の浪漫です。
あれ? 正面の写真忘れちゃった…

 ところがケースに入れて聴いてみると、なんか音が悪くなってる気がする。さっきほどの感動がない。なんで?
 オーディオっていろんな要素で音が変わります。アルミケースがコイルに悪影響を与えているのか、本チャンのハンダ付けがうまくなかったのか。でも疲れたのでこれでいきます。音質は… 結局PAMとあんまりかわりません。
 くどいけどTA2020が駄目なんじゃなくPAM8101が意外な伏兵なんです。繊細でマジメで、けれど不思議と聴き続けていたい音。どっちがいいじゃなくて、どっちもいい。それに誰も使ってないような石で音楽を楽しむのもなかなかオツでしょ? コストパフォーマンスは抜群だし(1コ90円)。
  ただ絶対的パワーはないので、ダイナミックレンジの広いクラシックを聴くなら最終的にはTA2020を選ぶしかありません。今はここまでとしますが、いずれ改良を加えることになるでしょう。まずは電源、それも左右で別供給するのがよいと密かに思っていますが。


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