早くも浮気!?編




 全国三千万人のインテル信者のみなさん、いかがお過ごしですか!? さぞやご満悦でしょう。
 なにせ野蛮なるAMD教徒ども絶望の淵に追い込む超CPU、Core2Duoが解禁直前なのですから。

 そんな今日このごろ、また怪しげなマザーを買ってきました。CPU付きです。
 ちなみにCPUはAthlonXPです!

PC-CHIPS製マザーボード M863G
MobileAthlon2100+(1.6GHz)搭載済みマザー

PC-CHIPSとは聞き慣れないメーカーですが実は最大手。
ECSとつながりが深いであろうことは、
マザボやサイトの作りを見れば一目瞭然ですな。
コンデンサとかVRM周りが、実に、こう、い〜い感じです。


 MobileAthlon、しかもBartonコア。遅いんだか早いんだか絶妙なショボさ加減。
 そのうえ「Socket563」という聞いたこともないアーキテクチャ。
 我がマニア心をくすぐるのに十分すぎる破壊力です。

 Core2Duo解禁を前にこの選択肢は明らかに間違ってるはずですが… この板、結構売れてるようです。
 要するに「大人のオモチャ」ですね。設定をいじり倒して遊び倒す。『男の浪漫』です。

 そうはいいつつ私自身はメインマシンとして使おうと野望を抱いてます。
 定格1.6GHzをなんとか2GHzの大台まで、スーパーπ(104万桁)で1分を切るマシンに仕上げてみたい。
 欲望in2006と呼ぶにはささやかですが、なかなか挑み甲斐のありそうな板です。



動作確認

 まずは動かしてみます。
 何も手を加えずといいたいですがCPUクーラーだけ手をいれました。こいつのやかましさはすでに噂になってます。クーラーへの供給電圧を落とし(配線のあいだに抵抗をかませて)、いざ起動。

見た目からしてゴツい。モバイルCPU搭載なのに

 BIOS画面を見てみると、なんとFSBは1MHz単位で設定可能。嬉しい誤算です。
 起動限界はおおむね160MHzくらいでした。160*12として1920MHzですか。予想以上にブン回ります。
 あわよくば166MHzまでと思いましたが、そこまで世間は甘くありません。
 電圧や倍率はマザボでの変更不可。MicroATXマザーばかりいじってるので慣れっこですが、ちょっと悲しい。

 基礎体力はおおむね把握できましたが、わからんのがオーバークロック時のPCI/AGPクロック。
 これがわからないと安心して前に進めません。下手するとHDDやVGAが壊れます。
 壊れても惜しくないHDD(1.6GB)にOS入れて、とりあえずベンチマーク。
 OS(WIN2000)が安定して動くのは1855MHz(155MHz*12)程度でした。

HDBENCH3.40b6結果

 MobileAthlon2100+ (1855MHz(155*12))
 PCCHIPS M863Gv3.0C
  512MB DDR CL2.0
 OnboradVGA (800*600*32)


CPU     81852 / 96221
MEMORY  21951 / 27952 / 33668
VGA     25781/ 24134 / 10432 / 137 / 30
HDD     7663 / 7561 / 2730 / 2179
現・メインマシン(参考値)
 GeodeNX1750(1450MHz(138*10.5)

 GIGABYTE GA−7VTXH
 256MB DDR CL2.0
 RADEON9600(1270*712*32)

CPU     63445 / 74610
MEMORY  23279 / 29828 / 34176
VGA     53962 50964 / 9340 / 267 / 59
HDD     30029 / 29510 / 10402 / 11657 

 SUPERπ(104万桁) … 1分10秒

 HDDがしょぼいせいかパッとしません。メモリ周りも遅いです。定格ではメインマシンにもスコアで負けます(1分21秒)。クロックでは勝ってるのに。


喝入れ?

 遅い原因はオンボードVGAが足を引っ張ってるせいではないかと、G400を差してみました。
(古いAGPカードなのでこのマザーボードで動くか心配でしたが、無事動きました)
 ほんとはAGPクロック計ってからにしたかったのですが、sandraとか入れても結局分からなかったので。
 再度ベンチマーク… 結果変わらず。

 しゃーない、喝入れじゃ!

 マザーボードに電圧の設定がないので、やむなくCPUに手を加えます。

CPUクーラーを外したところ。
右側の茶色いのがCPU(MobileAthlon2100+)。

大きさ比較のためにDuronを並べて置いてみました。
このCPUの小ささが際立ちます。


そもそもSocket563のマザボって、
日本で市販されたのは初めてではないでしょうか。

私がこれを買った理由のひとつでもあります。
マニアはレア物に弱いのです。


CPUの拡大写真。
Socket563のCPUなど
そうそうお目にかかれませんからね。
撮り忘れましたが、裏はピンが隙間なくぎっしりです。

「0515」という数字が見えますが、
2005年第15週製造ということでしょうか。


電圧の変更はCPU上の「ブリッジ」を加工します。CPU上に「L1」「L2」など金色の文字が見えますが、その横の

  :::::

 このように見えてるものがブリッジです。
 ブリッジ内の配線を切ったり(カッターナイフで)、つないだりして(鉛筆で)、CPUの動作を変更させるのです。
 電圧の変更は「L12」で行ないます(写真右側のスポンジに隠れています)。
 やってみましたが、結果は失敗、鉛筆じゃうまくつながらなかったみたいです。


倍率変更

 残念ながら電圧の変更はあきらめました。鉛筆以外に手軽な方法を思いつかなかったので。
 せっかくの省エネCPUにわざわざ電圧をかけるのは元々不本意でもあるし。
 自分としてはFSBが166MHzに上がれば不満はないので、攻め方をかえました。敢えて倍率を落としFSBを上げることとします。

 倍率を変えるのもブリッジ加工するのですが、「つなげる」のではなく「切る」のでカッターナイフ一本で済みます。
 むしろCPUクーラーをつけたり外したりのほうが恐怖です。コア欠け怖い!
 今回はうまくいきました。本来の12倍が10.5倍まで落ちました。166MHz*10.5=1750MHzでなんなく起動。
 その後、どこまで回るか限界までFSBを上げていきました。
「170MHz、172MHz…」
 駆逐艦の追撃から逃れようと潜行を続けるUボートの気分です。ギシ、ギシギシ… と船体のきしむ音が聞こえてくるような緊張感。歯を食いしばってその緊張感に耐え、心臓の鼓動に震えながらも更なる高みを目指す。これぞ自作の醍醐味、男の浪漫、オーバークロックの愉悦。
 結局178MHzでスーパーπが音を上げました。104万桁完走は176MHzまで(62秒)。1分の壁は切れませんでした。メモリをDDR333から400に換装すれば1分切れそうですが、現状でも満足です。これで常用可能かどうかはまだわかりませんが。


諸問題山積み

 実は電圧や倍率以外にも解決すべき問題が山積みです。

・USBの認識が変
 USBメモリーを使ってますがどうにも遅い。
 ベンチマーク計ったら、どうみてもUSB1.1相当のスピードしか出てません。
 マザボ付属CD−ROMでドライバは入ってるはずなんだけど… 改めてサイトからドライバーを入手。
 ただしその際USBドライバをUSBメモリーからいれるというヘマをやらかし、インストール途中で止まりました(当たり前)。
 結局FDDを使ってインストールしました。その後は順調です。

・CPUクーラー
 そのまんま使うと爆音なので、抵抗で電圧を落として使ってます。
 が、微妙に電圧が低すぎるのか、起動の際回らなかったりします。手で勢いをつけてやるとその後は正常に動きますが… 回し忘れた時の事考えると怖い。
 あと、抵抗自体が熱くなり余分な電気を食います。到底スマートなやり方とは言えません。

・熱い
 チップセットに張ってあるヒートシンクが手で触れないくらい熱くなります。おまけにメモリまでかなり熱い。ついでにこの部屋も熱いです(室内温度36℃)。
 CPUのクーラー(7cm)を外し、12cmのデカいファンに換装しました。CPUとチップセット、まるごと冷やす魂胆です。あわよくばメモリと部屋も冷えればいいなあ。
 ちなみにメインマシンのGeodeNX1750(1.4GHz)も今回のMobileAthlon2100+(1.6GHz)も、TDP値は同じ25Wですが、なんとなくMobileAthlonのほうが発熱が多い気がします。アイドリング状態でもなかなか温度が下がりません。倍増されたセカンドキャッシュの対価でしょうか。


3DMark2000の怪

 やはりFSBをあげるとあらゆる動作が快適になります。これならメインマシンに昇格させる価値があるかも。
 しかしまだ火種が残ってます。2GB程度のHDDではベンチマークも満足に入らないので120GBに換装してごちゃごちゃ入れて動かしてみましたが、どういうわけか3Dのベンチマークが落ちまくるのです。

・FFベンチ2 … 途中で強制終了(落ち方はランダム)
・3DMark2000 … ベンチマークは完走。デモの後半の屋内プール(?)のテスクチャ画面でフリーズ、再起動
・3DMark2001 … デモは完走。ベンチマークはひとつめで強制終了
・3DMark2003 … デモは完走。ベンチマークはCPUテスト2の終了直前で強制終了

 まともに完走するのは「フロントミッションオンライン」のデモくらい。FFベンチまでろくに完走できないのでは楽天家の私でも見過ごせません。メインマシン換装のメリットってせいぜい3Dゲームとエンコードくらいしかないのに。

 思いつく限り、試してみました。

・VGAをRADEON9600からG400に戻してみた(効果なし)
・CPUのFSBを落としたり倍率を落としたりしてみた(効果なし)
・マザーボードのサイトからAGPドライバを改めて導入(効果なし)
・BIOSでAGPへの割り当てメモリ量を増減(効果なし)

 う〜む。BIOSではほとんど設定項目がないんだよな〜。しかたない。ATIコントロールパネルをインストールし、コントロールパネル上でAGP設定をいじりました。

・AGP動作を8倍から4倍に落とした
・「FAST書き込み」をOFFに
・「垂直同期」を「常にON」にした

 ここまでした甲斐があり、ほとんどのベンチマークは通るようになりました。しかし3DMark2000だけは変わらず。しかも落ち方が「フリーズして再起動」という深刻さ。なんとかならんのか… と思ってた矢先、さらに深刻な事態が…

やってしもた

 なんだかマウスの動きがおかしいんです。反応がない、と思ったら勝手にカーソルが飛んだり。CPUに負荷がかかってない時は普通に使えますが、これじゃとてもメインマシンには使えません!
 改めてUSBドライバを物色したりと対策を講じているうち、さらに最悪の状況に。

 ハードディスクが、シュゥゥゥ … ン… とため息ついて止まってしまいました。

 この時点でようやく私も事態を把握。これはPCIクロックの異常だ!
 G400やRADEONが一応ちゃんと動いてるので、クロックは問題ないとたかをくくってたのですが… 甘かったです。 勝手な思い込みのせいで、HDDとマウスを壊してしまいました。完全に私のミスです。
 もったいない、というか申し訳ないです。私のパーツへの愛が足りなかったのです。見切り発車で可愛いパーツの命を奪ってしまいました。自作派として、決してしてはいけないことです。

 まだ完全には死んでないHDDをなんとか空冷ファンで介抱しつつ、最低限必要なデータをDVDにバックアップできました。

 この時点でこのマザーボードのメインマシン化は無期延期、1から仕切直しです。壊れてもいい2GBのHDDにつけかえ、VGAもオンボードですませ、なんとかPCIの本当の値を突き止め、正しい設定を見つけます。私はあきらめません、死んだHDDのためにも。

 それにしてもなんという大冒険でしょう。よくも悪くも、これが自作の醍醐味です。
 このマザーだけで一週間まるまる楽しめました。しかもまだ終わりません。もうそろそろ終わりたいんですが。
 これほどのトラブルとその戦い、インテル純正マザーではやりたくてもできないでしょう。

 でも、正直思いました。
 もうPCCHIPSは(そしてECSも)選ぶまい!



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