「ようやくの1年落ちマシン」
自作に理由などない。作りたければ作る。それだけだ。
思えば去年の暮れから数えて3台目。必要にかられて作ったものは一台もない。
それでも前々作のGeodeNXマシン、前作のモバアスマシンは、そこそこのパワーと省電力/静音性を兼ね備えた自分の身の丈にあったマシンだった。
今回は違う。明らかに必要を越えたマシンを、私は作ろうとしている。
だが仕方あるまい。今年2006年は稀に見るCPUの当たり年なのだ。
今年の主役Core2Duoの登場によってまさに「暴落」したAthlon64/X2。
憧れのCPUがついに射程圏内に捕らえられたのだ!
組む以上は目的がほしい。幸い弟がCGをやっているので今回は「弟のCGマシン」というコンセプトで挑むことにした。肝心の弟にはひとことも言ってないが。弟がいらないといえば私のメインマシンとして使うだけの事だ。
金欠病という慢性疾患にかかっている私だが、たまにはジャンク寄せ集めでないまともなマシンにしてみたい。なので給料ごとに厳選パーツをひとつずつ買い足していくことにした。なんか付録つきの雑誌みたいでおもしろい。金もないのに不要なマシンを組むなと言われそうだが、私は金欠病以上に重度の「自作依存症」にかかっているのでそんな意見は却下である。
部品調達
初期投資は次のとおり
CPU Athlon64 3700+ (中古 11900円) |
同じ店で8000円で売ってた3200+の方がコストパフォーマンスは上。しかし3200+は知り合いに組んだマシンに使ったので却下。同じ石で何度も組みたくない。というわけで敢えてセカンドキャッシュ1MBのサンディエゴ。 買ってから気づいたがこの石、妙に薄汚れてくたびれた風情。どうやら前のご主人には随分かわいがって(?)もらったようだ。安心するがいい、私は限界までしばくようなひどいことはしない。たぶん。 |
M/B ASUS A8V−MX (新品 6750円) |
今年の始め知り合い用に組んだ時はAthlon64のマザボの善し悪しなどロクにわからず、挙げ句にATIチップセット搭載という見当違いの板を買ってしまった。依頼者はオンボードVGA使いなので間違った選択ではないにせよ、今思えば自作派の選ぶ板じゃなかった。 今回は吟味の末これを選んだ。自分の懐を痛めて買う時はおのずと真剣さも増す。AGPカードが流用できるマイクロATXとなると選択肢は限られ、現状では「Asrock 939A8X−M」「ASUS A8V−MX」の二択。本命はAsrockだが日本橋でも見つけられずASUSを買ってきた。 何を隠そう、今までASUSで組んだことがない。大昔「T2P4」や「98AGP−X」といった板で「遊んだ」ことがある程度で、本気で組むのは初めて。どうもナンバーワンメーカーというのは生理的にうけつけないのだ。 とはいえASUSの実力はわかっていたつもりだ。実際にこの板を使ってみて思った。人気メーカーだけのことはあると。これで7000円弱は安い! |
メモリ PC3200/256MB 1枚 (中古 2280円) |
手持ち(512MB、256MB各一枚)で済ませるつもりが、256MBを買い足しお茶を濁した。手持ちの256MBと組ませてあわよくばデュアルチャネルできないかと思って。成功率が低いのは分かってるし、いずれキチンと買いなおすつもりだが。 しかし帰ってから気づいたが手持ちは両面実装、買い足したのは片面実装。試すまでもなくダメダメである。 |
残りの手持ち部品は
・HDD … Maxtorの30GB
・VGA … RADEON9600
・電源 … ENERMAX製300W電源
といったところ。HDDは無論暫定。S-ATAのものに買い換えるつもりだ。でないとせっかくの新鋭サウスブリッジVT8251が泣いている。
RADEON9600はこのまま使うかも。というかこれのためわざわざAGPを差せるマザボを選んだのだし。ファンレスのグラボ以外認めない私は消費電力の高そうなPCI−Eにあまり魅力を感じないのだ。
電源は一見問題なさそうだが、実はペン4登場以前の旧型なので12Vの供給がたった10A。これでも手持ちの電源では一番大容量で、これを押入れの中から見つけた時ようやく新マシン構築のふんぎりがついたのだ。12V供給用のいわゆる「田コネ」と、電源ピンの変換コネクタ(20ピン->24ピン)を買い足し、やっと使えるようになった(Asrockのマザボなら変換コネクタは不要だったのだが)。ここまでして旧い電源を使う必要があるのか大いに疑問ではある。
その他の部品はすべて手持ちのものを流用した。
とりあえず動かす
メインマシンにするつもりがないので、今回はとにかくいじって楽しむ。OSも何度も入れ直す覚悟でAthlon64マシンを体で覚えるのだ。前述のとおり組んだ経験はあるのだが、何週間、何カ月、自分の愛機として付き合わないとわからないことがきっとある。
まずは、素組みから。
今もってよくわからない「ハイパートランスポート」とかメモリのセッティングとか、そういうことは後回しにして、何も考えず組んで何も考えず電源オン。おお、動いた。
OSにはWIN2000を入れた。おそらく弟が使う時もこうなる。
弟はペインター6J使いである。2006年現在WIN98上で暮らすペインター6J使いである。
「今どきそんな馬鹿な事をしてるのは世の中でお前ひとりだ!」
本人に面と向かってそう言いたい。いや言った。しかし彼に悔い改める様子はない。
そんな彼に鉄槌を下すべく作られる最終兵器が、今開発中のこのマシンなのである。弟の愚かな行為を一刻も早く終わらせてあげたい。そんな兄の心が時空を超えて実体化しつつあるこのマシンなのである。その身は冷たいシリコンでできてはいても、魂は熱く燃えているのだ。この素晴らしき準ハイエンドマシンにWIN98などという棺桶に髪の先までつかっているOSを入れるなど私が許さんのである。というかメモリをバカスカ積めばどのみちそんな旧式OSは自ら悲鳴をあげて逃げ出すであろう。
いくらおせっかいといわれようが、それが自作派の使命なのだ。
さてOSは入った。まずはスッピン状態でスーパーπの肩慣らし。50秒。遅い!
続いてメモリをPC2700から3200に換装。ちょっと早くなった(計測タイム忘れました)。
その後、なぜかHDDの動作モードがPIOになっていた事に気づく。DMAをオンにして再度挑戦 -> 40秒! スーパーπにHDDのスピードは影響しないと思っていたのでこれは驚きだった。更に高速なHDDにするとスコアは伸びるのだろうか。
次はお楽しみのオーバークロック。
FSBはBIOSで1MHzごとに設定できる。FSBとAGP/PCIの非同期設定もあった。この設定ができるマザボに出会ったのは初めてだ。マイクロATX使いにもOCの権利はある。その人権を認めてもらえたような喜びを感じた。いいぞASUS、惚れたぞA8V−MX!
とはいえまだこのマザーの動作がよくわかってない現状で無理はできない。10パーセント程度のライトチューニングにとどめ、FSB220MHz(約2.4GHz)で再度スーパーπを実行。38秒までいった。40秒が切れるとは正直思っていなかった。1MBのセカンドキャッシュが効いているのだろうか。そう思いたい。4000円分の差額はせめて1秒でもいいから数字に現れてほしいものだ。
シングルチャネルの状態でのこのスコアにはおおいに満足した。まだこのあとにデュアルチャネルの世界が控えているのだ。給料もらってからだけどね。
その後いろいろ試してみたベンチマークの結果は下の表のとおり。
環境は上記のものと比べメモリを増設(256+512MB)、メモリクロックは166MB*2、ビデオ同期OFF、解像度は1024*768*32である。
今まで作ったAthlonXPマシンとは逆に、グラボが足を引っ張っている。CPUは優秀なので速いグラボと組ませればバランスのよいゲームマシンができあがるだろう。私には必要ないが。
π焼き | 40秒 |
3DMark2001 | 10478 |
FFベンチ3(High/Lo) | 3670 / 6126 |
3DMark03 | 2812 |
ゆめりあ(最高) | 3452 |
フロントミッションオンライン | 9257 |
HDBENCH 340b6 CPU | 112837 / 132359 |
メモリ | 116688 / 49951 / 95612 |
VGA | 60351 / 61157 / 17180 / 267 /59 |
HDD | 24236 / 25696 / 10650 / 11486 |
Vista Ready
今年はCPU改革の年だったが来年はOS改革の年となる。Windows Vista。
テストついでにベータ版(正確にはRC1)をインストールしてみた。このマシンなら重いOSでもへっちゃらでしょう。好き勝手やれるのがサブマシンの愉悦、ひと足お先に明日へダッシュさ!
マイクロソフトのサイトからOSをダウンロード(サイズは3ギガ以上。3時間以上かかった)。それをISOイメージでDVDに落書きしてクリーンインストール。うろ覚えだがインストール時には13GB以上のパーテーションを要求する。インストール自体は思いのほかあっさり完了(ディスク容量はOSのみで9GB強使用)。で、使ってみた感想だけど…
重い、使えん、無駄
メモリ512MBでのあまりの重さに耐えかねて256MB増設してみたけど焼け石に水。1GB必要という噂は本当のようだ。
AERO機能とやらも使ってみた。ウィンドウがゴロゴロ転がる。
「それで?」「だから?」
こんな子供だましのためにグラボの買い換えを強要される人たちが多数いるとしたら馬鹿げた話だ。無駄に電気を食い資源を食うOSは地球にやさしくない。
ソリティアと上海もどきのゲームを小一時間プレイして、私のVista体験は終了。
OSは64bitバージョンにしてみたがやはり時期尚早。グラボ以外の周辺機器はほぼ全滅。特に無線LANが使えないのでネット接続できないのが致命的。エンコードとかが劇的に速くなるなら専用マシンを一台組むのも悪くないだろうが。
まあ私には必要ないOSでした。そもそもVistaはオーバーレイに対応していないらしいので、ビデオキャプチャー必須の私にははなから無用の長物だけど。
というかこのOS、誰が必要とするのだろう? 人ごとながら気になってしまう。マイクロソフトはXPの一部バージョンのサポートをVista発売2年後に打ち切るなどと豪語しているが、その時ユーザーの多くが「新OS」でなく「別のOS」に行ってしまうのではないか? まあいまだアクティベーションを嫌がってWIN2000をメインで使ってる人間の戯れ言なので気にしないでほしい。私にとって「次期OS」とはXPのことである。
S−ATA導入
ようやく給料が入った。さてニューマシンに何を買ってやろう。
当初はメモリを買い換えるつもりでいたが、先にHDDを換装することにした。せっかくS−ATAU対応のVT8251が載っかってるマザボなので。NCQという新機能もぜひ試してみたいし。HDDの高速化は私の常に切望するところである。
最近のMy定番はSeagateのBarracuda。そして今選ぶなら垂直磁気160GBプラッタを2枚積んだ「ST3320620AS」だろう。私ならそうする。が、このマシンの仮想ユーザーは弟であり、彼はHDDの容量など全く気にしない。そんな人間に320GBはもったいない。悩みに悩んだ末…
・Barracuda 7200.9 SATA (ST3160811AS 160GB
キャッシュ8MB) … 7150円(新品)
を購入。コストパフォーマンスこそ悪いが1枚プラッタでスピードは変わらない(はず)。くわえて従来より薄型軽量。ひょっとしたら2枚プラッタより静かで省電力かもしれない。
ところがこいつを認識させるのがひと苦労だった。
データ用HDDとして使うなら問題はない。が、当然起動用として使いたい。NCQも使いたい。
あ、NCQってのはてっとり早くいうと「速くなるおまじない」で、対応したHDDと対応したコントローラが必要。で、そのどちらも私は持っている。NCQを有効にするにはBIOSでS−ATAを「AHCI」「RAID」モードのどちらかに指定しないといけない。さらにOSインストール時にFDDからドライバを組み込んでやる必要がある。ドライバの入ったFDDは前もってマザボ付属CDから作っておく必要がある。
それらを理解したうえで実際にやってみたのだが、どうにもこうにもOS(WIN2000)のインストーラーがHDDを認識してくれない。IDE互換モードなら問題なく動くと分かってはいるが、それではNCQの恩恵にあずかれない。ここは手を替え品を替え、PCと私の根くらべだ。
どうやらFDDも光学ドライブもUSB接続してたのが元凶らしく、通常のFDDを増設し光学ドライブもATAPIにしてようやく認識してくれた。文章で書くと数行だが、ここにたどり着くまでホント大変だった。
で、ようやく動いたHDDだがその使い勝手は…
いい! めちゃくちゃ、いい!
暫定使用の30GBとは比べるまでもなく、今まで使ったどのHDDと比べてもワンランク速い。
HDBENCH 340b6 HDD … 65473 / 66840
/ 28861 / 27879
といったスコアだが、体感はそれ以上だ。ベンチマークでは現れないロスがIDEからS−ATAになったことで軽減されているのだろう。
私はPCでの留守録等に「休止状態」を多用してるが、これにいたっては不可解なまでに速い。HDD換装前10秒以上かかっていたのが、今は4秒かからない。HDD速度の理論値を超えている。実際には圧縮するなどして必要なデータだけ転送してるのだろうが、それにしても速い。なぜか復帰時は換装前と大差ないのが余計に不思議だが。このあたりはメモリのデュアルチャネル化でさらに高速化されるかもしれない。
性能だけでなく動作音/発熱ともに優秀で、ほとんど存在を感じさせない。これは静音にこだわる者にとって最大級の賛辞である。購入時、店員に「S−ATAのHDDはうるさいです」と脅されていたが杞憂に終わった。同じ店員に「プラッタの数が違っても騒音や発熱に違いはない」とも言われたが、どうもあやしい。静音にこだわる自分には1プラッタがとても魅力的に思えてきた。
もっともHDDというものは個体差が激しく、同じ製品でも人によって評価がまるで違ったりする。そういう意味では「当たり」だったかもしれない。あと、今回初めてHDDの「慣らし」をやってみた。本格的なものではなく電源だけつないで数時間通電させてただけだが、このおかげでHDDが静かになったのだとしたら、次の機会にはぜひ本格的に「慣らし」作業してみたい。
ともあれ今までになく快適なHDDを得た。もうS-ATA以外使いたくないと思うほどだ。唯一の不満というか不安はこれがメイド・イン・チャイナであることだが、使い続けるなかで性能や静音/低発熱に加え信頼性も示してくれるなら、中国製品に対する私の見方も変わるだろう。
このマシンの感想
正確にはこのマシンというよりこのマザーボードの感想なのだが、多少の不満がある。
・起動がもたつく
なんでこんなに時間がかかるのだろう。第一候補だったAsrorkの方はBIOS画面にいけないほど速いと聞いているのでなおさら残念。
・MTU2400Fと相性が悪い
RADEONとの相性が悪いと後から知ったのだが、同じ組み合わせでも他のマザボでは問題ない。しかしこのマザボではVIAのドライバ/ATIのドライバ/カノープスのアプリの組み合わせをさまざまに変えても正常動作しなかった。それも全く動かないのではなく何度か起動/終了を繰り返すうちに段々悪くなっていくというタチの悪さ。この一点のためメインマシンとして使えないと判明。弟用のつもりだからいーけど。
追記 AGP/PCIの同期を切ったらあっさり直りました(フライトシムがあっけなくフリーズするので気づいた)。
10%のOCでもグラボには重荷だったみたい。
追記の追記 その後またしても不調。原因不明。あきらめました。
・BIOSでメモリ設定ができない
FSB以外を標準の設定から変更しようとすると起動しない。せっかくの細かい設定が生かせないので残念。
・BIOSで電圧を変えられない
CPUやメモリの電圧を変えられない。CPUの倍率変更もできない。もうそろそろマイクロATXでも遊べる板を作ってほしいものだ。需要は多いぞ、きっと。
・休止状態に入れないことがある
これはうちの無線LAN(コレガ・WLUSB-11mini2)が主犯。他のマザー(GA-7VTXH)でも同様なことがあった(PC-CHIP
M863Gでは正常動作)。この無線LAN、機嫌が悪いとWIN2000の起動を恐ろしく遅らせたり、DVDを焼く時にも「セマフォがタイムアウトしました」とかわけのわからんエラーメッセージを出してコーヒープレートを量産してくれたりとダメダメちゃん全開である。
よい点もみつけた。オンボードサウンドだ。
普段ならオンボードは使わないどころかBIOSで切ってしまうのだが、音質にこだわらない弟用のマシンということで使ってみた。
音が太いというか迫力がある。余分な低周波が含まれてそう聞こえるのかもしれないし解像度はよくない気もする。しかし悪い音ではない。チャンネルセパレーション(左右の音の分離)も比較的いいように思える。従来のオンボードサウンドで感じたノイズや音飛びといった低レベルの問題もない。CPUの性能に余裕があるからかもしれないが、いずれにせよ実用に耐える音、という気がする。
なお、サウスブリッジのVT8251は「HDオーディオ」に対応しているらしいのだが、マザボの取説にはその記述が一切ない。残念である。もっとも自分は「HDオーディオ」というのがなんなのかよく分からないのだが。
総評
Athlon64はやはり優秀だ。すべての動作が軽快になった。S−ATAの優秀さも嬉しい誤算だった。事前に随分調べたもののS−ATAやRAID/AHCIに関する有益な情報は少なく、AMD環境それもVIAチップではなおさらで、結局自分で試してみるのが一番だった。
こんな優秀なマシンが財布に優しく組めるとはいい時代になったものだ(お)。無論AthlonX2やCore2Duoがこの上に君臨するわけだが
「これより速いCPUなんか、いらんだろ」
…ホントは試してみたいけどね。ちょっとだけ。
ああ、メモリのデュアルチャネル化は、次の給料が出たらね。