CubePC編


Mini-ITXへの目覚め

 母のPCが遅すぎるので新たに作ることにした。
 彼女のマシンのCPUはPEN3-800(だったと思う)。ネットとオフィスをたしなむ程度ならこれで問題ないと思ってた。しかし時代の流れはその程度の作業でさえ、もはやメガヘルツ級マシンの存在を許さない。
 サイトを見にいくだけでカクカクする。フラッシュやらJabaScriptやら裏で何してるかよくわからん様々なソフトのせいで動作が重い。そして一番の原因はワクチンだ。ウイルスの脅威からPCを守るという大義名分の名の元に、ワクチンはいつの間にか主人面でPCを仕切っている。そしてオーナーであるはずの母は落ち穂拾いのように残りのリソースで細々と暮らしている。これでは本末転倒だ。
 愚痴をこぼしたところでマシンが早くなるものでもない。ここはひとつ、ふんぞり返ったワクチンが泣いて逃げだすようなハイパーマシンを新調するとしよう。

 今回のマシンに必要な機能は以下のとおり。

・デュアルコア(「ワクチン対策」に必須の武器)
・NCQ(PCの足を引っ張るHDDの効率を少しでも上げるため)
・DVI(現在使ってる液晶はDVI接続オンリー)

 熟慮のうえ、今回はMini-ITXケースを使うと決めた。リビングに置くPCだし母の作業内容なら拡張性は不要と判断してのことだ。
 マザーボードも決めた。「ZOTAC NF630I-D-E」。チップセットはGeForce 7100+nForce 630i。なんのことはない、自分のメインマシンと同じ構成だ。メモリのデュアルチャネルこそ非対応だが、上記3つの要件を備えしかも低発熱なのでコンパクトPC向き。そのうえ廉価(11000円弱)。自分のメインマシンと遜色ない性能がMini-ITXケースで実現できるとは。
 で、日本橋で買ってきました。


Shuttle製キューブ型ベアボーン KPC K48

ベアボーンかよ! ZOTAC買うのと違うんかい!

 ええ。急遽変更。だってお目当ての店でZOTAC売ってなかったもん。
 「今日買う!」と決めたらその日のうちに買っちゃうのだ。買い物と結婚は勢いが大事。

とは言え迷った末の購入ではあった。
でも、ちゃんとデュアルコア対応だし、ほら、DVIもついてるでしょ。
え、NCQ? なんすか、それ。

むかって左上の電源FANが異様に小さいのが気がかりではある。

5インチベイを搭載していることもあり、内部はMini-ITXケースと思えない広さ。
母のメインマシンということで光学ドライブも必要なので、これにしました。

ドライブベイはネジ2本で上から外せるので作業性も良好。
下手なMicro-ATXケースより好感持てます。

市販のMini-ITXマザボの取り付けができないので厳密にはMini-ITXケースと呼べないけど、
細かい事は言いっこなし。

 型落ちチップセット(Intel945G + ICH7)、100W電源、拡張スロットなし、と非常に割り切った構成だが、これで15000円弱なら文句なし。従来のMini-ITXにあった割高感は微塵もない。廉価版ゆえ前面がシンプルなのが却って高級感さえ漂う。
 いよいよ常識的な価格で組めるようになったMini-ITXに初チャレンジしてみたが、これならデスクトップと同じ感覚で組めそうだ。

今回のPCの構成

ベアボーン … Shuttle KPC K48 「K45」に続くShuttle製激安キューブ型ベアボーン第2弾。
5インチベイとDVI端子を備える。
\14,200-
CPU … Pentium Dual-Core E2140(1.6GHz) メインマシンからブッコ抜く。代わりにE5200を買ってメインマシンに付けた。 \8,200-
(E5200の値段)
HDD … Barracuda 7200.9 ST3160811AS
 (S-ATA 160GB/8MB)
デッドストック。
160GBながら1プラッタの薄型HDD。
(\0-)
メモリ … PC2-6400 1GB(片面実装) これもメインマシンからブッコ抜き、予備(両面実装)をメインにまわした。
チップセットはデュアルチャネル対応だが、今回はとにかく省電力を優先。
(\0-)

 寄せ集めながら消費電力の少ないパーツが揃い、キューブPCには理想的な構成になった。NCQが使えないのが残念だが。

 少々不安なのが電源。あまりに小さいファンは甲高いノイズでユーザーを苦しめてくれるだろう。それにしても出力100Wとは。日頃から小出力の電源がいいと言い続けてる自分でさえしり込みするスペック。しかしメーカーがベアボーンとして売り出している以上、これで十分という事だろう。

 初めてのMini-ITXということで熱と騒音が心配だが、まずは素直に組んでみよう。

組んでみた

ドライブ用ベイを外したところ。
1枚の鉄板を折り曲げただけの手抜き構造。
しかし取り外しはネジ2本で簡単だし、
取り付け時は本体とドライブベイが互いを補強してケースの剛性を高める。
凝った作りではないが必要にして十分。

廉価版ケースとして手の抜きどころが上手いと感じた。
Mini-ITXにもかかわらずエアフローは見てのとおり問題なし。
CPUクーラーはE5200付属の薄型クーラーを使った。

付属のSATAケーブル(オレンジ色)は最小限の長さでエアフローを邪魔しない。脱落防止のラッチもついてて感激。
いっぽう付属IDEケーブルはエアフローを阻害するフラットケーブルだったので、手持ちのスマートケーブル(白色)に換装した。
廉価版ケースなので電源のコネクタも必要最低限(FDD*1 IDE*1 SATA*1)。
だが、それがいい。
OSインストール中。

全体が小さいおかげもありケースの剛性に不満はない。
ただし上蓋は笑ってしまうくらいヘナヘナ。
それと(この個体だけかもしれないが)D-SUB15ピンのコネクタが根元からグラついてる。DVIしか使わんから関係ないが。


「なんで黒色ケースに白いDVDドライブ付けるかなあ」と突っ込まれそうだが、
真に突っ込むべきは、これがDVDじゃなくCD-RWドライブだってことだ。


 問題はこいつの騒音だ。いったいどのくらい爆音を撒き散らしてくれるだろうか。

 確かに静かではない。だが予想していたよりずっとマシだった。特に不安だった電源ファンも。
 小さいケースほど冷却で、ひいては静音性で不利になる。それを考えると十分健闘している。おそらく大半のユーザーなら許容範囲だろう。自分の常用マシンとしてどうかと聞かれれば即座に「ノー」だが、静音性で私を満足させたケースなど今までひとつもないのだからそれを望むのは酷というものだ。



 ノイズの件はひとまずおいて、まずはBIOS画面をのぞいてみた。
 メモリにPC2-6400(DDR2-800)を積んでるのだが、その設定ができてない。
 CPUのほうもオーバークロック設定が貧弱でBusSpeedも255MHz(FSB1020MHz)が限界だ。
 i945Gというチップセットを使うのは初めてなのだが、どうもその程度の性能らしい。だがカリカリにチューンして楽しむような板でもないし箱でもない。定格の1600MHzが2040MHzまで回ればCPU性能は十分だし、メモリの性能が足りないなら改めてデュアルチャネルにすればいい。それより大事なのは安定性だ。
 話が先回りするが、上記のOC設定のままで3、4日ほど自分で使ってみたが完全に安定していた。自分のメインマシンより頑丈なくらいだ(さすがインテル純正チップ)。
 マザボ自体も起動が早くBIOS画面をさっさとかっとばすので気持ちいい。

 OSはXPを入れSP3はじめすべてのパッチを当てたが、全く安定で体感速度も問題ない。今の母のマシンとは比較するまでもない。
 ライトユーザーなら十分メインマシンとして使えると感じた。

ささやかなパニック?

 拍子抜けするほどあっけなく組みあがったCubePC。
「昔はいろんなトラブルが出てきて楽しかったのになあ…」
 そんな心の願いが通じたのか、でっかいトラブル(?)が私を待っていた。

 「CPU-Z」というPCの状態を表示するソフトがある。例えるならPC用の聴診器、ハードユーザーなら誰でも使ってる自作派の友だ。
 その「CPU-Z」でCPUのコア電圧を見たとき、私の心臓は凍りついた。

 1.8V

 PentiumDC E2140の定格電圧はせいぜい1.2〜1.3V。電圧を上乗せしてOCするにしても1.4V〜1.5V程度。1.7Vまで上げるのは水冷などの重装備で挑む猛者か余程の怖いもの知らずで、1.8Vもかけた例は見たこともない。明らかになにかがおかしい。というかヤバい。この表示が本当ならいつCPUが焼損してもおかしくない。
 誤表示の可能性もあるので「SpeedFan」をインストールしてみることにした。「SpeedFan」は文字通りPCのファンのスピードを制御するソフトで、各種センサーからの温度も表示してくれる。例えるならPC用の内視鏡、ハードユーザーの多くが使ってる自作派の味方だ。
 「SpeedFan」はデュアルコアの場合2つのコアそれぞれの電圧を表示する。表示電圧は1.8Vと0.9Vだった。

 電源を落として考えた。なぜ1.8Vなのか、2つのコアで電圧に大差があるのはなぜか、表示は信用できるのか。温度表示のほうは20℃台を推移し2つのコアの温度も揃ってる。もっとも表示を信用すればの話だが。BIOSでの値は1.28Vと至極まっとうなのだ。やはり誤表示と考えるのが自然、というかぜひ誤表示であってほしい。それを確かめるすべはないのか。
 ひとつ思い当たることがある。1.8VというのはDDR2メモリの供給電圧と同じなのだ。ひょっとしたらと思い、BIOS設定でメモリ電圧を1.9Vに上げてOSを立ち上げてみた。すると表示電圧も1.9Vとなっていた。

 以上の結果からコア電圧の異常はメモリ電圧を誤表記したものとみなして使っている。ひとさわがせなプチ・トラブルでした。 


恒例の静音化


 さて、私の手にかかったケースは静音化改造の魔の手を逃れることはできない。
 とはいえ今回のいけにえはスタイリッシュなベアボーン、外観を損なわない程度にすませるつもりだ。

 こいつの一番の騒音源はやはり電源ファンだ。小さくて高回転なので甲高い騒音を放つ。
 最も効果的なのは大きなファンに換装して低回転で回すことだ。しかしそれができるほど内部は広くないし、外にはみ出せば外観が台無し、そもそも親の使うPCの電源を改造するのは気が引けるので今回はパス。
 次善の策としては、ファンを同型の静音タイプのものに換装すること。これは多くの人が実践しており比較的気軽だ。しかし今回はやらない。というかできない、次の給料日までは。理由はお察しください。
 「一番やかましいところから潰す」というのが静音化対策の基本なのだが、こういう事情により、それ以外の場所から潰していくことにする。

ケース前面の化粧版と金属本体の間はがらんどう。
ここで騒音が反響増幅される。

防音材代わりに古着のセーターをきざんでねじ込む(青紫色のもの)。
今回はアンゴラ入りの高級品。
虫に食われなきゃ、まだ着れたのに…
ケース天板があまりにフニャフニャ。
蓋をすると共振して却ってやかましくなる。

昔買った防音材がちょうど手ごろな大きさで残ってたので使用。
接着テープ付きなので作業は楽でした。
左右で張り方が違うのは、向かって左側に電源がくるため。
決して防音材が足りなかったのではありません。ええ、決して。

これは効果的でした。
ただし防音材の厚みで蓋を閉めてもちょっとだけ天板が持ち上がっちゃう。
そんな詰めの甘さが手作り感溢れてていいでしょ? いいよねっ!?

 防音材を使うと俳熱の点で不利になる。しかし今回は発熱の少ないパーツで揃えたので大丈夫。
 CPUに負荷をかけ続けた状態でのコア温度は40℃。全く問題ないレベルだ。

 電源ファン交換という決め手を欠いたので静音化の効果は中途半端だが、この状態で実際に母に使ってもらって特に不満の声はない。
 ていうか、リビングって意外とやかましいんだね。ほかのノイズに紛れてPCの音なんてたいして気にならない。
 それでも電源ファンは交換するつもりだけど。


使い勝手など

 このケースを選んだ理由のひとつは「前面になにもなくてオシャレ」ってこと。
 しかしこのケースの購入に悩んだのも「前面になにもなくて不便」ってこと。
 せめてUSB端子のひとつくらい欲しい。なんなら前面の化粧版加工してでも!
 実際かなりやる気になっていた。これくらいの改造できんでどうする、オレは自作派なんだぞ!

 …あきらめました。私はB型。動けばいいや、のB型。みてくれを気にしないB型。目的のため手段を選ばずいつしか目的まで見失うB型。
 そんな自分がこの綺麗なケースを手にかけたらどうなるか、自分が一番よく知っている。

これは母が今まで使ってたPC。

「スイッチと光学ドライブだけ手元に置くようにすれば、
置き場所もとらないし騒音も減るぞ」
「発熱源のHDDを外に出せばケース内の熱が減るぞ」

そんな発想で作ったら、こうなりました。

私が思いのままに腕を振るえばどんなことになるか、
この写真が如実に物語っています。

 というわけでUSB端子増設工事はあきらめ、延長ケーブル1本でお茶をにごした。


 USBメモリ(2.0対応)を使って「延長コードの有無による転送速度の変化」を調べたが、全く変化はなかった。つまり問題なし。
 さらにケース背面の拡張用ブラケットにUSB端子を2基増設した。合計6基のUSB端子があればさしあたって十分だろう。

 母がネットに使うには十分すぎる性能のPCができた。今は問題なく動いている。
 完成後唯一の問題は「大きすぎて予定してた場所に置けなかった」こと。おかげで母は部屋の片付けに半日を費やすこととなった。
 Mini-ITXが小さいといってもそれはあくまでPCとして。リビングに置くにはまだ大きかったみたい。この次はAtomで組みますか。


更なるパワーアップの余地

 以上で今回のPCの製作はおしまい。だが更なるパワーアップもひそかに検討している。SSDの導入だ。
 今回残念だったのはNCQが使えないこと。ワクチン対策にデュアルコアを選択したのはいいが、ワクチンとユーザーでHDDのアクセスを奪い合う状況は変わらない。
 しかしSSDはNCQが不要でランダムアクセスに強いので、旧チップ搭載のローコスト機でも一気にパワーアップを狙える。しかも省電力で無音。これを使わない手はない。
 最大の問題はコストだが、このところ順調に安くなっている。容量の少なさもSSDの欠点だが、このマシンに大容量は必要ない。旧マシンのデータをバックアップした際、CD1枚分しかなかった。そんな母の使用実績からして32GBはおろか16GBでも余裕で間に合うだろう。
 デフラグを止めたりRAMDISKを活用したりと、SSDを有効に使うには特殊なテクニックがいるみたいだが、機会があれば是非トライしたい。
 


総評

 今回初めてMini-ITXで組んだわけだが、非常に好印象だった。

 まずケースがよかった。さすがはMini-ITX老舗のシャトル製だけあって作りがこなれている。全体としてMini-ITXながら設計に「余裕」が感じられる。あと何センチ小さく作ろうとか、あとこれだけ削れる、というギスギスした設計ではなく、そのぶん作業性やエアフローに余裕がある。そういう作業性やエアフローをなにも考えず作られたケースをうんざりするほど見てきただけに、経験と知恵に裏打ちされたこのシャトル製ケースは完成度が高いと思った。
 エントリーモデルということでシンプルで割り切った性能なのがなおさらGOOD。拡張性の高い高級機にクアッドコアやグラボで重武装するより、低発熱なローエンドコアでシンプルに組むほうがMini-ITXらしい。

 パーツの進化もコンパクトPCには追い風だ。昔のMini-ITXといえばメインマシンに値しない性能か、爆熱パーツを無理に押し込む爆音マシンばかりだった。だが今回作ったこのマシンには無理がない。メインマシンとして十分な性能を持ちながら構成パーツはどれも省電力、低発熱、そして安価だ。唯一不安なのは安物と思われる電源だが15000円を切るベアボーンにそこまで望むのは酷だろう。
(PCパーツの進化の中で、電源とOSだけが出遅れている気がする)

 ここまでMini-ITXのコストパフォーマンスがあがれば、もはや自分のメインマシンとしても使える気がする。
 たしかに今回のPCはDDR2-800未対応だしグラボの増設できないしFSBを1333MHzしたけりゃアルミホイル使うしかないけど、そんな数字をあげつらうより実際使えばわかる。体感速度は自分のメインマシンと大差ない。さらにデュアルチャネル化してSSDを増設すれば冗談ぬきで今の自分のマシンより快適になるだろう。
 今どきのチップを積んだマザボが手ごろな値段で出たら、真剣に考えるかも。


結論

 来年あたりSSDがブレイクすれば、本格的にMini-ITXの時代が来そうです。


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