武闘自作派編(その2・組み立て編)

 買い物を二日間にわけたのは正解だった。とにかく重くてかさばるのだ。結局友人に頼んで車で持って帰った。そして念のため、もはや自分のものではないFMVも一時的に返してもらった。理不尽な事だがパソコンを作るにはパソコンがいるのだ。さあ組み立て開始だ。

 まず筐体の包みをとく。この時点で早くもこの筐体のメンテナンス性の悪さに気づく。マザーボードを取り付けるまでに最低9本はネジをはずさないといけない。カバーがコの字型のものより3面に別れてる方が便利かと思ってこの筐体にしたのだが、これだけメンテナンス性が悪いとそれ以前の問題って気がする。不便なだけではなくアブナさもひとしお、キラリと光るエッジ部分も見れば納得の切れ味、肌に厳しく深剃りがききそうだ。もちろん動けばいいのだが、もし次に筐体を買う時は迷わずメジャーなものにするつもりだ。それにこの筐体、何にも説明書が入ってなかったけど、そういうものなのかな。

 だが筐体に説明書がなくてもたいした不便はないが、マザーボードに説明書がないというのは、これはどういう事だろう。超簡潔な簡易説明書は入っていたが本物のマニュアルは入ってなかった。店の売り場の見本にはちゃんとカラー刷りのマニュアルがついてたのに。あれは販促用だったのだろうか。
 そういえば嫌な事思い出した。某I社のマザーボードには説明書がなく、付属のCD−ROMの中にオンライン説明書があるらしい。パソコン作るための説明書がCD−ROMの中にあってど〜すんじゃい、バッカでぇ〜! と、その話を聞いたときは大笑いしたものだが、まさか自分がそのジョーカーをひく事になるとは、とほほ。
 クレームつけて説明書もらいに行こうかとも思ったが面倒くさいし、どうせ英語のマニュアルだから多分何の役にも立たないだろう。こうなったら前もって買っておいた自作パソコン組み立てノウハウ本だけが頼みの綱だ。

 ノウハウ本片手に筐体の板にマザーボードを取り付ける。これは楽勝だった。続いてマザーボードにメモリをとりつける。これは恐怖の作業だった。メモリ増設ならFMVユーザーの頃に経験があるからとたかをくくっていたのだが、どういうわけかSIMMの時と違ってこのSD−RAMは全然差さる気配がない。マザーボードが悪いのかメモリが悪いのか相性が悪いのかそれともこんな私が悪いのか。最後は覚悟を決めてマザーボードがミシミシいうまで腕も折れよと力を込めて、ようやく差す事ができた。もう恐ろしくてこいつを二度と抜く気にはなれない。この時点でXA100とSD−RAMは運命共同体となった。

 それから筐体にFDD、HDD、CD−ROMドライブをとりつけた。筐体の前カバーの外し方が分からず多少悩んだが再びノウハウ本が役にたった。どうでもいいがこの筐体の鉄板は異様にブ厚い。だいたい駆逐艦の装甲くらいはある。どうりで重いはずだ。メイドインチャイナ、侮るなかれだ。
(ちなみに本物の駆逐艦の外板は8ミリ程度の鋼板だがこれを装甲とは言わない。駆逐艦乗りは、直撃弾をくらえばひとたまりもないそんな自分の艦の事を、親しみと嘲りをないまぜにして「ドラム缶」と蔑称していた。だがそんな事パソコン自作とは何の関係もない)

 頼りのノウハウ本の手順に従って各種ケーブルを取り付けた。『赤赤の法則』の意味がやっと分かった。やっぱり自作って勉強になる。だがノウハウ本も完璧ではなかった。電源スイッチやHDDアクセスランプ等のLEDの配線について、ノウハウ本には色のついた方がプラスで黒はマイナスと書いてあったのだが、この筐体はどうやらカラーがプラスで白がマイナスみたいだ。LEDなら最悪壊れてもいいや、と思い切ってエイヤッ、とやってみたら全てうまくいった。強運、いまだ我を見放さず、である。
(ちなみに『赤赤の法則』とは各種ドライブの接続ケーブルと電源ケーブルを正しく繋げた場合に、赤で色づけされた部分同士が互いに内側を向く、という経験則である(旧NEC98シリーズを除く)。そんなこと教科書みても書いてないし子猫にきいてもそっぽ向くけど、でももしかしなくても本当だ)

 そしてマザーボードを取り付けた板を筐体本体に取り付ける。そして憧れのビデオカードPWR128PをPCIポートに差し込む。カードとマザーボードと筐体の「部品の合い」も問題なさそう。マザーボードの目隠し板も取り付ける。若干のズレはあるがそれでも中国製の筐体の穴を通して、ちゃんと台湾製のマザーボードのコネクタが見えている。二つの中国は今一つとなった。

 さあいよいよ通電だ。さすがに緊張する。ピッ、とか音がしてちゃんとLEDも点灯する。どころかBIOSの画面にはちゃんとK6−2/300の表示が。嬉しい。マザーボードはリビジョン的にぎりぎりK6−2の発表に間に合ったのだろう。ちゃんと周波数も300MHZと誇らしげな数値が示されている。メモリもきちんと数えてくれている。成功だ。
 だが思わぬ所に落とし穴はあった。筐体の中を覗き込んだ私は何か妙な胸騒ぎがした。
(CPUクーラーが回ってない?)
 どうも電源が邪魔で暗くてよく見えないのだが、奥まった所にあるCPUクーラーが動いてるんだか動いてないんだか。試しに電源を落として動きを見比べてみた。確かに止まったままだ。もう一度電源を入れ、CPUクーラーの電源コードをクイクイ引っ張ると、動いたり動かなかったりする。あきらかに接触不良だ。気づいて良かった。新品のCPUがパーになるところだった。接触不良は一度CPUクーラーを外してコードを繋ぎなおしたら直った。
 それにしてもあの虫の知らせは何だったのだろう。見えないCPUクーラーが動いているか止まっているかなど、そんなかすかな音の違いが自作初体験の私に分かるはずがない。いくら理屈で考えても納得がいかない。おそらく私は天性の自作野郎なのだろう。そう思うことにした。

 あとは思いのほか順調だった。唯一トラブルらしいトラブルはディスプレイの電源。FMVにはあったサービスコンセントがこの筐体にはなかった。うっかりしてた。しかもディスプレイの電源コンセントの形状が3Pなので家庭用コンセントに差す事ができない。仕方なくFMVを起動させてそこから電気をもらってディスプレイをつけ、動作確認した次第だ。
 そんな些細なトラブルはあったがこれで組み立ては成功した。あとはウインドウズのインストールだけだ。無論それが大問題なのだが。
 でもそれよりも大事な問題があった。明日に備えて眠る事だ。                                     


DIYメニューへ   武闘自作派編その3へ

inserted by FC2 system