コメットさん☆パロディー「メテオの一番長い日」後日談

 

 …そして数日後。
「ケホケホケホッ」
「姫さま、大丈夫でございますか」
 ベッドに寝込むメテオの姿があった。
「これくらいどうってことないったら、ゴホゴホッ、ないのよ」
 熱にうなされながらメテオは満足そうな表情だ。
「だってこの風邪はただの風邪じゃないの。シュンさまにいただいた風邪なのよ」
 メテオはぼおっとした表情で頬を染める。
「随分たちの悪い風邪ですな。お熱も高うございます」
「そうなの。シュンさまの愛で心はもうこんなにポカポカ」
「脈もずいぶん乱れております」
「あの方の事を考えただけでこの胸のドキドキがとまらないの」
「病はそうとう重いですな」
「そうよ、これは恋の病」
「はあ、さいですか」
 これだけ口が達者なら心配あるまいとムークが熱さましのタオルをかえていると、
「メテオちゃん」
 階下から留子の声がする。
「お友だちがお見舞いに来てくれたわよ」
 そのひとことにメテオはバネ仕掛けのようにハネ起きた。
「お通しして」
「でも… 今日は帰ってもらったほうがいいんじゃない?」
「せっかく来ていただいたのに、お会いしないなんて失礼だわ」
「わかったわ。でも無理しないでね」
 階段を下りる留子のスリッパの音が消えていく。
「シュンさまが来てくださったわ」
 メテオは夢見心地で祈るように手を組んだ。
「忙しいスケジュールをぬって、わたくしのために来てくださったのよ」
「しかし姫さま。おやつれの身なれば、無理に面会なさらないほうが…」
「な〜に言っちゃってるのかしらったら言っちゃってるのかしら? わたくしの病なんかシュンさまに会えばたちまち吹き飛んでしまうのよ。愛という名の特効薬に治せないものなんかないのよ」
「そんな非科学的な考えは認められませんな」
「そんなことどうでもいいのよムーク、いいから手鏡を貸しなさい。どうよわたくしの髪は。きちんと整っているかしら」
「山婆もかくありなん」
「キャーッ! 早くしなさいなんとかしなさい星の子たちわたくしに時間を下さい!」
「姫さま。じっとしてないと整えられません」
「これがじっとしてなんかいられないのよ!」
 トン、トン。
 そして愛のメッセンジャーが扉を叩く。
「どうぞ。開いてますわ」
 手鏡をベッドの下に隠し、猫なで声でメテオがささやく。
 ガチャリ。
「お待ちしてましたわ、シュンさま」
 にこやかなメテオの表情がたちまちひきつる。
 真紅のバラの花束をもって入ってきたのは…
「メテオさ〜ん!」
 そう、への5号こと神也であった。
「ギャ〜ッ! な、なんであんたが!?」
「なんで病気の事教えてくれなかったんです? でももう大丈夫です。メテオさんが治るまで僕がつきっきりで看病してあげますから」
「あんたに看病された日には治るものも治らないのよ!」
「じゃあ僕、一生メテオさんの看病ができるんですか。幸せだなあ!」
「どこをどう聞き違えたらそういう発想になるわけ?」
「まあまあメテオさん落ちついて。身体にさわります」
「この状況で落ちついてられるわけないでしょ!」
「メテオさん安心して下さい。僕、特効薬持ってきましたから。愛という名の特効薬を!」
「そんな非科学的な考えは認めないわ」
「メテオさん、愛の力は偉大です。僕が今それを証明します」
 神也のメガネがキラリと光る。
「僕がメテオさんのためにできる事。それは愛するメテオさんのため歌う事!」
 そして神也はやおら愛用のエレキギターを取り出した。
 メテオの顔が恐怖にゆがむ。
「僕のメテオさんへの思いを込めて。『ラヴ・ハンター』エンドレスバージョン、聴いてください!」
「いっやあぁ〜〜〜っ!!」
 そして神也は歌った。歌いまくった。

 数時間後、様子を見に来た幸治郎と留子がメテオの寝室で見たものは、脱水症状を起こし気絶したメテオと、ギターを抱き床に伏しそれでも満足げな表情を浮かべる神也の姿であった。あったあった。

(完)

                                        

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